「文章がうまい」じゃ解けない問題だった。二重案件の”詰み”を消したのは、たった1つの運用ルール
![]()
こんにちは、papanaviです。
フリーランスをやっていると、こんな場面に出くわすことがあります。
A社に見積もりを出した。返事待ち。
その間に、B社から「急ぎで依頼したい」と連絡が来た。
さて、どうしますか?
僕はこの状況で、何度も「詰み」を経験しました。
- A社を待っている間にB社を受ける → 翌日A社がGOしてきて破綻
- B社を断ってA社を待つ → A社は結局「見送り」で、案件ゼロ
- 両方に曖昧な返事をする → 信頼を失う
「どう書けばいいんだろう」と、AIに何度も相談しました。
文章を練りに練って、丁寧なメールを書きました。
でも、解決しなかった。
なぜなら、これは「文章」の問題じゃなかったからです。
解決したのは、たった1つの運用ルールを決めたとき。
今回は、その「1手」を共有します。
見積もり提出後の「検討中」、どう対応すべき?
結論から言います。
「検討中」は枠を保留するのではなく、枠を解放するスイッチとして扱う。
これが、詰みを消した運用ルールです。
正直、この結論にたどり着くまでに、僕は何週間も悩みました。
夜中にメールの文面を何度も書き直して、朝起きたら「やっぱり違う」と消す。
そんなことを繰り返していた。
でも今は、この運用ルールがあるおかげで、迷わなくなりました。
「検討中」が来ても、焦らない。淡々と次の手を打てる。
その具体的な流れを、これから説明します。
よくある詰みパターン
フリーランスあるあるの状況を整理すると、こうなります。
- A社(堺さん)に見積もり提出済み。返事待ち
- B社(大江さん)から急ぎ案件。明日には「やる/やらない」を伝えないといけない
- 2本同時進行は物理的にキツい
- でもA社から「やっぱり発注で!」が来たら断れない
ここで頭の中はずっとこれ:
「失礼にならない断り文はどれか?」
「期限を切っていいのか?」
でも、この問い自体がズレていました。
本当の問題は「枠の扱い」だった
僕はずっと「検討中」を「待つべきもの」だと思っていました。
だから検討中が続く限り、その枠を空けておかないといけない気がしていた。
でも冷静に考えると:
- 検討中 = 発注確定ではない
- 発注確定ではない = 制作枠は確保されていない
- だから、その間に他案件を進めてもいい
「検討中」は”保留”ではなく、”解放”のトリガーだったのです。
この認識の転換が、すべてを変えました。
なぜ「待たないといけない」と思い込んでいたのか?
振り返ると、僕には2つの思い込みがあったんです。
1つ目:「待っているほうが誠実」という思い込み
見積もりを出した以上、相手が決めるまで待つのが礼儀だと思っていた。
他の案件を進めるのは、なんとなく不誠実な気がした。
でも、よく考えると、それは僕の勝手な思い込みでした。
相手は「検討中」と言っているだけで、「待っていてください」とは言っていない。
2つ目:「断ったら嫌われる」という恐怖
後から「やっぱり発注します」と言われたときに「すみません、他の案件が入りまして」と言うのが怖かった。
「なんだ、うちは後回しか」と思われるんじゃないかと。
でも実際は、ルールを明確に伝えておけば、そういう事態にはならない。
「枠は確保できません」と伝えた上で、後から来たなら、相手も納得してくれる。
この2つの思い込みを外したら、一気に楽になりました。
なぜAIに聞いても解決しなかったのか?

正直に言うと、この問題でめちゃくちゃ相談しました。
- Geminiに何度も聞く
- ChatGPTにも何度も聞く
- Claudeにも聞く
- あるモデルの答えを別モデルに見せて検証する
- それをまた別モデルに見せる
でも、なぜか解けなかった。
AIの回答は「文章」で止まっていた
ClaudeもGeminiも、言うことはほぼ同じでした。
とりあえず期限を切って聞けばいい
「明日15時までに決定ください」でOK
もちろん、それも正しい。
でも僕はそれを聞いた瞬間、こう思っていました。
「いや、検討中って言われたらどうするの?」
期限を切って聞いて、返ってきた答えが「検討中」だったら、結局、僕は待つしかない。
その間にB社を受けたら、翌日A社がGOしてきたとき終わる。
だから僕にとって「検討中」は、ただの”保留”じゃなくて、“詰み”の合図だったんです。
ChatGPTだけが刺さなかった理由
不思議だったのはここ。
ClaudeもGeminiも「期限」で話が止まるのに対して、ChatGPTだけは、ずっとこれを外さなかった。
「進行する/検討中/見送り」
3択で決定をもらってください。
特に「検討中」を必ず入れてください。
僕は正直、最初こう思った。
「いや、検討中って言われたら詰むんだから、入れる意味なくない?」
だからこいつ一番頭悪いのか?って疑った。
問題の本質は「問いの立て方」だった
今になって思うと、僕がAIに投げていた質問自体がズレていたんです。
僕が聞いていたのは:
- 「失礼にならない断り方は?」
- 「丁寧な期限の切り方は?」
- 「相手を不快にさせないメールの書き方は?」
全部「文章」の質問でした。
でも本当に聞くべきだったのは:
- 「検討中のとき、枠をどう扱えばいいのか?」
- 「二重案件で詰まない仕組みはあるか?」
- 「感情ではなくルールで判断する方法は?」
問いが間違っていると、どんなに優秀なAIでも正しい答えは返ってこない。
これは今回の大きな学びでした。
「検討中」の本当の意味は何だったのか?

ここが今回の肝心。
僕は「検討中=待つ」だと思い込んでいた。
だから検討中が怖かった。
でも実際は、
検討中は、待つための言葉ではなく、枠を解放するためのスイッチだった。
つまりこういうこと。
「検討中」は、相手が「まだ決められない」と言っているだけ。
それは「発注します」ではない。
だから、
- 検討中 = 発注確定ではない
- 発注確定ではない = 制作枠は確保しない
- だから、その瞬間に他案件を進めてOK
- もし後から「発注で!」が来ても、その時点の最短着手日で決せればいい
「検討中」の正しい扱いはこれ:
了解です。
ただし発注確定前なので制作枠は確保できません。
いったん他案件の進行に充てさせていただきます。
ご判断が固まった時点で、最短着手日と納期をご相談しましょう。
この一手で、僕がずっと恐れていた「翌日GOで詰む」が消えた。
フリーランス20年でやっと気づいた「枠」の概念
僕はフリーランスのデザイナーを20年やっています。
でも、この「枠」という概念を明確に言語化できたのは、つい最近のことでした。
会社員時代は、案件の優先順位は上司が決めてくれた。
「Aが先、Bは来週から」と言われれば、その通りにすればよかった。
でもフリーランスは違う。
自分で判断しないといけない。
しかも、複数のクライアントが同時に「うちが最優先」と思っている。
この状況で、感情で判断すると破綻する。
「この人は大事なクライアントだから」「この人には借りがあるから」
そういう基準で動くと、いつか必ず詰む。
だから、感情を排除したルールが必要だったんです。
詰まない運用ルールとは?
ここからは、実際に僕が運用しているルールを共有します。
ルール1:制作枠を確保する条件を固定する
枠確保は「発注確定」または「着手金(予約金)」が入った案件のみ。
- 「検討中」「未決定」は枠を確保しない(=他を進める)
- これを例外なく運用する
曖昧にすると、また詰みます。
「この人は大事なクライアントだから待とう」とか始めると破綻するので、ルールは機械的に。
ルール2:「検討中」は”保留”ではなく”解放”のトリガーにする
相手が「検討中」と言ったら、こちらは:
- 「了解です」だけで終わらせず
- “枠は確保できないので他案件に回す” を明文化する
これを伝えることで、角が立ちにくい。
相手を急かしているのではなく、運用ルールを提示しているだけだから。
ルール3:後から発注が来たら”その時点の現実”で決す
- 「昨日決定遅かったけど今日発注したい」は起こりうる
- その時は申し訳なさで引き受けず
- 確実の最短着手日を提示して「待ばせる」
早め希望なら:優先対応/追加費用/特急料金などで調整可否を確認。
なぜ「例外なく」が大事なのか?
このルールを運用するとき、一番危険なのは「例外を作ること」です。
「この人は昔からの付き合いだから、待とう」
「この案件は大きいから、ルールを曲げよう」
こういう判断を一度でもすると、次からも迷います。
「あのときは待ったのに、今回は待たないのか?」という矛盾が生まれる。
だから、ルールは機械的に運用する。
相手が誰であっても、金額がいくらであっても、同じルールを適用する。
これが一番楽です。
判断コストがゼロになるから。
実際のメール文面はどう書けばいい?
ここからは、コピペで使えるテンプレートを載せておきます。
1)Aへ:15時までに概況だけ(期限あり)
“`
件名:お見積りのご決定概況について
堺様
お世話になっております。Space Productionの江頭です。
お見積りのご提案までお待たせしてしまい、申し訳ございませんでした。
先日お送りしたお見積りの件、恐れ入りますが【明日15:00まで】に、
現時点のご意向(進行する/検討中/見送り)だけでもお知らせいただけますでしょうか。
制作枠の確保の都合で、期限までにご連絡が難しい場合は、
【明日以降の枠はいったん他案件の進行に充てさせていただきます】。
その場合でも堺様案件をお断りする趣旨ではなく、
ご連絡いただいた時点の空き状況で【最短着手日・納期をご相談】させてください。
よろしくお願いいたします。
江頭
“`
ポイント:期限の理由は「他客」より「制作枠の運用」。プライドに刺さりにくい。
2)Aから「検討中」と来た時の返し(最重要:詰み回避)
“`
堺様
ご連絡ありがとうございます。承知しました。
恐れ入りますが現時点では発注確定前のため制作枠の確保ができず、
【明日以降の枠は他案件の進行に充てさせていただきます】。
ご判断が固まりましたらご連絡ください。
その時点の空き状況で【最短着手日と納期をご案内】いたします。
引き続きよろしくお願いいたします。
江頭
“`
ポイント:「了解です」だけで終わらない。枠を保持しない宣言を必ず入れる。
3)15:00まで無回答だった時(15:05に送る)
“`
堺様
お忙しいところ恐れ入ります。
本日15:00までに概況確認ができなかったため、制作枠の都合で
【明日以降の枠はいったん他案件の進行に充てさせていただきます】。
ご判断が固まりましたらご連絡ください。
その時点の空き状況で最短着手日・納期をご相談いたします。
よろしくお願いいたします。
江頭
“`
4)Bへ:GOの連絡(Aが検討中/無回答になった瞬間に送る)
“`
大江様
お世話になっております。江頭です。
お待たせしました。貴社案件、こちらで進行可能です。
着手:○月○日〜/初稿:○月○日目安で進めさせてください。
進行にあたり必要資料(○○)をご共有いただけますとスムーズです。
よろしくお願いいたします。
“`
5)翌日Aが突然「発注で!」と言ってきた時(詰まない返し)
“`
堺様
ありがとうございます。承知しました。
現在の稼働状況ですと、最短で【○月○日〜】着手可能です。
納期はそこから逆算してご相談させてください。
もし前倒しをご希望の場合は、優先対応(または体制追加)で
調整可否を確認しますので、希望納期をお知らせください。
“`
ポイント:申し訳なさで引き受けない。現実の最短着手日を堂々と提示して「待ばせる」。
メールを書くときの心構え
テンプレートを載せましたが、実際に書くときに大事なのは「心構え」です。
1. 謝らない
「申し訳ありません」を多用すると、こちらが悪いことをしているように見える。
でも実際は、運用ルールを提示しているだけ。悪いことは何もしていない。
必要最低限の丁寧さは保ちつつ、過度に謝らない。
2. 言い訳しない
「他のお客様が」「急な案件が」という説明は不要。
むしろ、そういう説明をすると「じゃあうちは後回しか」と思われる。
シンプルに「制作枠の運用で」と伝えるだけでいい。
3. 選択肢を与える
「○○してください」という命令形より、「○○か○○でお選びください」のほうが角が立たない。
相手に主導権があるように見せながら、実はこちらの運用ルールに沿っている。
この3つを意識するだけで、メールの印象がかなり変わります。
なぜこの設計が厳しいのか(客観)
この運用ルール、一見すると「冷たい」と思われるかもしれません。
でも、実はそうじゃない。
相手を急かしているのではなく、運用を提示しているだけ
「検討中」を受け入れながら、こちらが拘束されない形にしている。
相手は自分のペースで検討できる。こちらも他案件を進められる。
Win-Winなんです。
二重案件の最大事故(翌日AがGOで詰む)を構造で防ぐ
「文章で丁寧に断る」ではなく、枠の扱いをルール化することで、
感情に左右されない判断ができる。
“丁寧さ”と”プロの段取り”を両立できる
「他のお客様が〜」は相手のプライドに刺さる可能性がある。
でも「制作枠の運用で〜」なら、ルールとして淡々と伝えられる。
この運用ルールを導入してから変わったこと
実際にこの運用を始めてから、いくつか変化がありました。
1. 夜中にメールで悩まなくなった
以前は「この書き方で失礼じゃないかな」と、夜中にずっと考えていた。
今は、テンプレートに沿って書くだけ。判断コストがゼロになった。
2. クライアントとの関係が悪化しなかった
正直、この運用を始めるとき「嫌われるかも」と思っていた。
でも実際は、誰からも文句を言われていない。
むしろ「スケジュール管理がしっかりしている」という印象を持たれている気がする。
3. 案件の取りこぼしが減った
以前は「検討中だから待とう」と思って、結局案件がゼロになることがあった。
今は、検討中の間も他案件を進めるから、どちらに転んでも仕事がある。
分岐テーブル(迷ったらこれを見る)
最後に、判断に迷ったときの分岐表を載せておきます。
注意点(事故るポイント)
運用する上で、気をつけるべきポイントも書いておきます。
「他のお客様が〜」は使わない
相手のプライドに刺さる可能性がある。
基本は使わず、「制作枠の運用として」淡々と。
“脅し”に見える曖昧表現は避ける
「〜かもしれません」「〜の可能性があります」は、
圧をかけているように見えることがある。
運用として淡々と伝える。
「検討中」を受け入れる=「枠を保持する」ではない
ここが最重要。
「検討中ですね、わかりました」だけで終わると、
暗黙的に「待っています」と伝えたことになる。
必ず「枠は確保できない」を明文化する。
最初は怖かったけど、慣れた
正直に言うと、最初にこのルールを運用したときは怖かったです。
「枠は確保できません」なんて書いたら、怒られるんじゃないかと。
「なんだその態度は」と言われるんじゃないかと。
でも、実際に送ってみたら、何も起きなかった。
相手は普通に「わかりました」と返してきた。
そこで気づいたんです。
僕が恐れていたのは、相手の反応じゃなくて、自分の想像だったと。
一度やってみれば、意外と大丈夫。
最初の一歩が一番怖いだけで、2回目からは普通にできるようになります。
まとめ:文章で迷ったときほど「運用」を疑う
今回の学びはこれです。
- “失礼にならない文章”を探しても解けない問題がある
- 解決すべきは文章じゃなく、構造(詰み) の方だった
- 「検討中=枠解放」という運用ルールを置いた瞬間、頭が整理された
もし同じように、「断りたいけど失礼かも」と悩んでいるなら、
文章を磨く前に枠の扱い(運用ルール)を先に決めるのが一番早い。
「検討中」は怖くない。
それは「まだ決まっていない」という事実を教えてくれているだけ。
だから、その事実に基づいて、淡々と動けばいい。
最後に:フリーランスの「仕組み化」について
今回の話は、見積もり〜発注の流れに限った話でした。
でも、同じ考え方は他の場面にも応用できます。
- 修正回数の上限をどう伝えるか
- 追加作業が発生したときの見積もりの出し方
- 納品後の保守対応をどこまでやるか
全部、「その都度考える」ではなく「ルールを決めておく」ほうが楽です。
感情で判断すると、ブレる。
ルールで判断すると、ブレない。
フリーランスは、自分の判断基準を言語化して、仕組みにしていくことが大事なんだと思います。
この記事が、同じように悩んでいる誰かの参考になれば嬉しいです。
参考
- 本記事は筆者(papanavi)の実体験に基づいています
-
前の記事
AIはデザイナーの仕事を奪うのか?24,991人調査で“88.6%が脅威”という現実 2026.02.05
-
次の記事
記事がありません